読売新聞に掲載されたことから需要があると判断し、1年以上経ちましたが予告通り続きを書きます。

どんな補聴器を買えばいいのか、これもよくある質問です。
補聴器には耳かけタイプ、RICタイプ、耳あなタイプやポケットタイプなどの様々な種類があり、それぞれに特徴があります。

答えは、補聴器をつけて何がしたいか(目的)聴力検査の結果予算です。この3つで補聴器の選択肢が絞られます。そして、正しく補聴器を調整する技術自分にあった補聴器が出来上がります。

この4つは全て重要です。それぞれ見ていきましょう。

聴力

これが補聴器選択の全ての土台となるものです。正しく聴力が評価出来ていなければ結果が全て異なります。難聴の種類も伝音難聴、感音難聴、混合性難聴があり、これらを正しく評価出来なければなりません。言うは易く行うは難しです。
クオリティの高い聴力検査を行うには「防音室」「検者の経験値」次第です。

これは当院の防音室の1つです。

防音室は設計の段階から推敲を重ね、かなり正確な検査が可能です。
また、防音室内に検者と被検者が一緒に入ることも重要です。
ここまでこだわる必要があります。

一般社団法人 日本補聴器販売店協会から抜粋

上のイラストは聴力に対応した補聴器のタイプを簡単に示した図です。耳かけタイプが全てに適応するのではないか、と思いますが、耳かけタイプの中にも高度難聴用、重度難聴用などの適応が分かれております。耳あなタイプの中のCICタイプ(耳の中にすっぽり入るタイプ)は、軽度から中等度難聴までが適応となり、高度難聴の方は適応外となります。見た目だけで選択すると、購入してもよく聞こえない補聴器となります。
また、語音明瞭度検査も重要です。伝音難聴は音を大きくすればよく聞こえますが、感音難聴は音の輪郭がはっきりしない事が多く、音を大きくするだけではよく聞こえません。個人に合わせた調整が必要になってきます。

感音難聴のイメージ

茨城県内には語音明瞭度検査をせずに補聴器を導入しているクリニックが多くあります。これはあまりよろしくない状況です。
語音明瞭度検査が一定の数値を下回ると身体障害(聴覚障害)となります。重度難聴の方で補聴器による聴覚改善が難しい場合は人工内耳という選択肢もあります。

目的

何のために補聴器をつけたいのか?これも非常に重要です。

  • 家族とコミュニケーションをとるために補聴器をつけたい
  • 仕事で会議などがあり聞こえないため補聴器をつけたい
  • アラームなどが聞こえず身の危険を避けるためにつけたい

このように補聴器をつける目的は様々だと思います。社会活動が多い場合は、補聴器に色々な機能があれば便利な事が多いです。逆に、社会活動が少なく家にじっとしている場合は必要最低限の機能があれば良いです。

これは車をイメージすれば分かりやすいです。普段家にしかいない高齢者が、近くを移動するために車が欲しいと言った場合、ポルシェをすすめる必要はありますか?逆に、仕事で世界各国を忙しく移動する40代の方に原付バイクをすすめますか?このように考えると良いでしょう。

資金

「目的」と重複する点がありますが、補聴器は様々な機能をつければつける程、値段が高くなる傾向にあります。値段が高いほど使い方が複雑になりますが、着け心地が良く聞き取りも向上します。また、見た目を重視したCICなどの目立たない補聴器も高価になります。
Bluetooth搭載機能も非常に便利で、専用アプリでスマホと連携し音楽を聴いたり、ネトフリを観たり、補聴器を自分で調整できたりもします。
機能や見た目を重視するのであれば、それなりの資金が必要です。逆に、最低限の機能でよければ10万円以下で購入する事が可能です。

これも車に例えると良いです。普段から家にしかおらず、近くを移動するだけでも資金が潤沢で車が好きであればポルシェを勧めてもいいと思います。

調整技術

上記3つの点を考慮し補聴器を選択後、患者さんの耳に合わせて適切に調整する技術が必要です。耳栓の選択も極めて重要で、耳栓一つで結果が全然変わることもあります。多くの種類の耳栓を知っておくことが必要です。
また、調整する際に、補聴器適合検査(効果測定)を実施しているかも非常に重要です。補聴器適合検査は補聴器から出力される音は正確か、補聴器を付けていない状態と付けた状態で聞こえがどう変化しているか、聞き取り(語音明瞭度)は向上しているかを調べる事ができます。

まとめ

以上の4点をしっかり守ることで自分に合った補聴器を購入することができます。また、購入したら終わりではなく、購入後も正しくメンテナンスすることで使い続ける事が可能です。