この度、メニエール病に対する“中耳加圧療法”が当クリニックでも施行可能となりました。
2018年に保険適応となった比較的新しい治療法です。

メニエール病とは?

 メニエール病は耳鳴、難聴、めまいを繰り返す病気で、内耳が水膨れすることに起因します。
内耳は聞こえに関わる聴覚器官(蝸牛)と体のバランスに関わる平衡器官(前庭、半規管)からなる感覚器官です。メニエール病は内耳全体の水膨れにより、聴覚症状と平衡症状が表れます。

メニエール病の診断基準

  1. 症状
    1. めまい発作を反復する。めまいは誘因なく発症し、持続時間は10分程度から数時間程度である。
    2. めまい発作に伴って難聴、耳鳴、耳閉感などの聴覚症状が変動する
    3. 内耳神経以外の神経症状がない
  2. 検査所見
    1. 純音聴力検査で感音難聴を認め、初期にはめまい発作に関連して聴力レベルの変動を認める
    2. 平衡機能検査でめまい発作に関連して水平性または水平回旋混合性眼振や平衡障害などの内耳前庭障害の所見を認める
    3. 神経学的検査でめまいに関連する内耳神経以外の障害を認めない
    4. メニエール病と類似した難聴を伴うめまいを呈する内耳・後迷路疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性疾患などの原因既知の疾患を除外できる
    5. 聴覚症状のある耳に造影MRIで内リンパ水腫を認める

メニエール病確定診断例→症状の3項目を満たし、検査所見の5項目を満たしたもの
メニエール病確実例→症状の3項目を満たし、検査所見の1~4の項目を満たしたもの
メニエール病疑い例→症状の3項目を満たしたもの

メニエール病に対する画像検査は造影MRIを施行します。
特殊な方法であるため施行可能な施設は限られておりますが、院長が東海病院在籍時に内リンパ水腫用のプロトコールを導入したため、当院から紹介する患者さんは、東海病院で内リンパ水腫に対する造影MRIが施行可能です。

メニエール病の重症度

  • Stage1:生活指導のみで与薬を必要としない時期
  • Stage2:生活指導と与薬を必要とする、完治可能な最も重要な時期
  • Stage3:初期治療が不成功に終わり、不可逆的病変を伴う対症療法の時期
  • Stage4:進行し、保存的治療に抵抗し外科的治療が考慮される時期
  • Stage5:高度に進行し、病態は活動的ではないが後遺症が明らかな時期

中耳加圧療法

 メニエール病は、内耳に内リンパという液体が過剰に溜まり水ぶくれになる(内リンパ水腫)のために起こるとされています。原因はよく分かっておりませんが、ストレス睡眠不足、過労、神経系の疾患、几帳面な性格が影響すると言われております。

 メニエール病の治療方法は、まずは内服薬やストレス解消、運動など保存的治療を進めていきます。保存的治療で治療効果が得られない場合は、鼓膜換気チューブ挿入術や内リンパ嚢開放術などの外科的手術を選択していましたが、2018年に中耳加圧療法が認可されてからは手術の前に中耳加圧療法を選択することが可能となりました。中耳加圧療法は、強弱をつけた圧力(圧波)を耳の奥に送り、内耳に貯まったリンパ液を押し出します。

 中耳加圧療法の適応は重症度Stage4以上の難治性の症例が対象となります。

詳細

指針には、メニエール病確実例で、生活指導のみの保存的治療を 2 週間(Stage 1)、生活指導と与薬のみの保存的治療を 2 週間(Stage 2)、生活指導と与薬のみの保存的治療をさらに4 週間(Stage 3)行ってもめまい発作を繰り返すもので、メニエール病診療ガイドラインの重症度分類に基づく総合的重症度 Stage 4「進行し、外科的治療が考慮される時期」を満たすもの。ただし、保存的治療期間は前医の保存的治療期間を含む。と記載されております。
 受診してすぐに開始できるものではありません。他院からの引継ぎで治療をご希望される方は、治療歴の分かる紹介状など持参することをお勧めいたします。

非侵襲中耳加圧装置「EFET01」


 クリニックより器械をレンタルし、1日2回、3分程度施行いただく形となります。毎日めまい手帳に簡単な日記を書いて頂き、月に1回診察を受けて状態を確認いたします。管理料として3割負担の患者さんで月額6000円ほど掛かります。

 毎月受診できない、毎日実地できない、毎日めまい手帳を記載できない方は治療を中止させて頂く可能性があります。この機器での治療期間は基本的には12カ月で、症状に応じて36カ月まで継続することがあります。

ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。