今回は耳の病気の話ではなく、患者さんの多いアレルギー性鼻炎についてお話しをしようと思います。

アレルギー性鼻炎とは?

アレルギー性鼻炎とは,アレルゲン(アレルギーの原因物質)が鼻の粘膜に付着することで,鼻の粘膜でアレルギー反応は生じ,鼻水・くしゃみ・鼻づまりといった不快な症状がでます。
お子さんの場合は鼻を頻繁にこする、鼻血を頻繁に出す、口呼吸やいびきとして気づかれることがあります。

アレルゲンとして多いのは花粉です。スギヒノキハンノキカモガヤオオアワガエリなどのイネ科、ブタクサヨモギなどのキク科などが挙げられます。これらは季節性のアレルギー性鼻炎の原因となります。
一方で1年中症状がでる通年性アレルギー性鼻炎の原因としてはダニハウスダスト(この中にはダニやカビ,ペットの毛などが含まれます)などがあります。

アレルギー性鼻炎の検査

血液検査

採血を行い、特異的IgE抗体を測定します。スギやブタクサ、ダニなど、具体的なアレルゲンの名前が知ることが出来ます。抗体の量が高いとそのアレルゲンに対してアレルギー反応を起こす可能性が高い事を意味しますが、実際には症状を起こさない場合もあります。検査結果はあくまで参考所見として判断します。採血だけで鼻の所見も見ずにアレルギー性鼻炎の診断は出来ません。

鼻汁好酸球検査

アレルギー性鼻炎の80%では鼻汁中に好酸球という細胞が増加します。鼻汁を採取して好酸球を調べます。簡便な検査ですがとても有用です。

鼻粘膜誘発試験

鼻の粘膜にスギやハウスダストの成分を染み込ませた紙切れを置いて反応を見ます。最も鋭敏な検査の1つで、実際にアレルゲンに対して鼻炎が発症しているかどうかを判断できる唯一の方法です。ただ、検査には準備がいり疑陽性が少なくありません。

アレルギー性鼻炎の診断は複数の検査や臨床所見を合わせて総合的に判断します。

アレルギー性鼻炎の治療

  1. 避ける

    原則として、対象のアレルゲンを避けるのが、第一の予防治療となります。
    それでも改善しない場合には以下のような治療方法を選択致します。すべて当院で行えます。

  2. 内服加療
    • 抗ヒスタミン薬

    現在は眠気や口の渇きなどの症状が出にくい第二世代抗ヒスタミン剤が医療機関で処方されるものの主体となっております。副作用が強いほど効果も強いわけではありません。服用回数や眠気の強さ、服用するタイミングなどライフスタイルにあったものを選択していくことが大切です。長い期間使用しているからといって耐性がつくことはないのでご安心下さい。

    • 抗ロイコトリエン薬

    アレルギー性鼻炎のガイドラインで鼻詰まりが主体の方に効果が高いとして推奨されている薬です。眠気はほぼ出ないため、眠気が気になる鼻詰まりが強い方にはよい薬です。ただし鼻中隔弯曲症や肥厚性鼻炎といった構造的な異常を伴う鼻詰まりの方には効果が乏しいです。CTやファイバースコープなどで精密検査を行ったことがない場合には一度行うことをおすすめしております。
    好酸球性副鼻腔炎の方には効果が高いため、主軸として処方する薬の一つです。こちらも長い期間使用しているからといって耐性がつくことはないのでご安心ください。

    • 鼻噴霧ステロイド薬

    全身へ吸収されることが少なく,鼻粘膜の局所で非常に良く炎症を抑えてくれる治療薬です.ステロイドと聞くと心配される方もいますが,小児でも長期使用しても成長抑制などは非常に少ないことがわかっております.

  3. 舌下免疫療法

    アレルギー性鼻炎の原因となっているアレルゲンを毎日取り込むことで,身体をアレルゲンに慣れさせる治療です。非常に有効性が高く2年間でダニに対しては80%の人が、スギに対しては70%の人が症状が改善したというデータがあります。
    3年間継続した場合、中断してもその後5年間は効果が持続すると言われておりますが最終的に投与前の体質に戻ってしまいます。可能な限り継続していくのが望ましいとされております。

  4. ヒスタグロビン注射

    ヒスタグロビン®は1967年から販売されている歴史の古いアレルギー治療薬剤です。アレルギー性鼻炎のガイドラインに載っておらず効果には個人差がありますが、安価に行える治療法です。特定生物由来製品の血液製剤であり、激しい喘息発作を起こす人、生理前から生理中の女性、妊娠している方には使用できません。1週間に1~2回、合計6回を1クールとして注射を行います。

  5. スギ花粉症に対する抗IgE抗体注射治療

    2020年よりこれまでの治療法で効果が見られず「最重症」の方を対象として抗IgE抗体を医療機関で皮下注射する治療が認可されました。適応を満たした方においては良い治療ですが、値段が高い治療であるためよく説明させて頂いた上で導入をしております。

  6. 下鼻甲介粘膜焼灼術(レーザー焼灼)

    粘膜での反応を少なくして症状の軽減をはかるというのがこの方法です。焼かれた粘膜は3~4週間でアレルゲンが侵入しにくく、腫れにくい粘膜に変わります。また、粘膜下のアレルギーに関係する細胞も減少するためアレルギーの症状が軽くなると考えられています。薬を飲めない方や飲みたくない方におすすめです。我慢のできる小学校高学年の子から施術可能です。

  7. 手術加療

    鼻詰まりが構造的な問題で起こっている患者に対しては、ガイドラインでも手術治療が推奨されております。鼻中隔弯曲症の方であれば、鼻中隔矯正術(内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型)や肥厚性鼻炎の方であれば粘膜下下鼻甲介骨切除術(内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型)を行います。

アレルギー性鼻炎でお困りの方は、ぜひ一度ご相談下さい。