久々の更新となります😅

おかげさまで2024年10月で開業2年となりました。開院してしばらくは難聴患者さんがメインでしたが、今ではずいぶんお子様が増え、小児科の待合室のようになっているときもあります。
そんな感じなので、今回はお子様向け(耳鼻科)のお話をしようと思います。

耳鼻科診療において小児に処方される薬は、風邪薬抗アレルギー薬抗菌薬などが多いです(処方の必要性に関しては今回は言及しません)。それらの薬の成分中には子供に悪影響を与えるものがあり、代表的なものに第一世代抗ヒスタミン薬やコデイン系鎮咳薬、一部の抗菌薬があります。

今回は第一世代抗ヒスタミン薬についてお話します。

第一世代抗ヒスタミン薬について

抗ヒスタミン薬は、簡単に言うとアレルギーを抑える薬で、第一世代と第二世代に分類されます。第一世代は1980年以前に開発された薬で、速効性で効果が強いものが多いですが副作用も強いです。第二世代はそれ以降に開発された薬で、効果はそこまで落とさずに副作用を軽減しているものになります。

第一世代抗ヒスタミン薬は、抗ヒスタミン作用と抗コリン作用(ムスカリン受容体遮断作用)が鼻水を抑える働きがあり、鼻水を抑える効果を期待して風邪薬として使用されています。

イモゾー

第一世代抗ヒスタミン薬は鼻水を止めるために、アレルギーの薬としてだけではなく、風邪薬としても使用されているんですね。

よく使われる第一世代抗ヒスタミン薬にポララミン®(d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)、ペリアクチン®があります。

第一世代抗ヒスタミン薬の小児への悪影響

  1. 脳内へ移行することで、けいれんを誘発するリスクがあり、特に熱性けいれんの既往のある小児や発熱時の使用は勧められません。
  2. 鼻汁の分泌量が減るので鼻汁が固くなりキレが悪くなり結果的に風邪の治りが悪くなることがあります。特に乳児だと鼻の孔が小さいので鼻づまりによりフガフガする傾向にあります。
  3. 脳内へ移行することで鎮静作用があり、眠気や集中力低下を引き起こします。無自覚に集中力や判断力、作業効率の低下を生じることがあり、これをインペアード・パフォーマンス(鈍脳)といいます。

このような報告があり、最近の小児診療では、第一世代抗ヒスタミン薬は子供の風邪に対して処方されない傾向にあります。当院では小児の風邪に対して、これらの薬を処方したことはありませんし、これからも処方することはありません。

もし他の医院で処方されてしまった場合は注意が必要です。

イモゾー

市販の風邪薬のなかにも第一世代抗ヒスタミン薬が使用されていることがあるので、子供に使用するときは注意が必要ですね。

第一世代抗ヒスタミン薬は子供のアレルギー性鼻炎、花粉症には使っていいの?

先ほど述べたように、小児への第一世代抗ヒスタミン薬は悪影響があるため長期間の使用は推奨されません。特にインペアード・パフォーマンスが問題になるため、長期間の内服が必要な場合は第二世代抗ヒスタミン薬を使用しましょう。
第二世代抗ヒスタミン薬は第一世代に比べて中枢神経系への移行が少なく、鎮静作用や抗コリン作用が軽減されていますが、一部の第二世代抗ヒスタミン薬には注意が必要です
第二世代抗ヒスタミン薬の中でも、ケトチフェンザジテン®オキサトミドセルテクト®は、脳内への移行性が高いため、痙攣を誘発する可能性が指摘されています。特に、熱性痙攣の既往がある小児や、発熱時の使用には注意が必要です。また、第一世代抗ヒスタミン薬と同様にインペアード・パフォーマンスが生じる可能性があります。

下図は主な抗ヒスタミン薬の脳内ヒスタミン受容体占有率を示しています。
50%以上のものを「鎮静性」、20%以上50%未満を「軽度鎮静性」、20%未満を「非鎮静性」と分類します。

脳内ヒスタミンH1受容体占拠率
後藤穣:日耳鼻 2021;124:943‐947.

第二世代抗ヒスタミン薬の中で、眠気が少なく小さな子供から使用できるものを紹介します。
フェキソフェナジン(商品名:アレグラ)、レボセチリジン(商品名:ザイザル)は生後6か月以上の乳幼児から、ロラタジン(商品名:クラリチン)は3歳以上の小児に使用可能です。デスロラタジン(商品名:デザレックス)はロラタジンの活性代謝物で、要はロラタジンの改良型です。日本では12歳以上の子供に使用可能ですが、海外では生後6ヶ月以上の乳幼児から使用可能です。
ビラスチン(商品名:ビラノア)は15歳以上の子供に使用可能です。

イモジロー

インペアード・パフォーマンスは思ったより怖いね。子供は眠気を感じずらいから、薬の副作用が分かりにくい。いつのまにか集中力が落ちてて成績が下がってしまった。。。なんてことも。
まずは眠気の出ない薬と点鼻薬を使用することが重要だね。

セレスタミン(後発品名:エンペラシン、サクコルチン、ヒスタブロック)について

セレスタミン(後発品名:エンペラシンなど)という薬を聞いたことがあるかもしれません。主に、アレルギー性鼻炎、花粉症などに使用される薬ですが、子供に処方されたことのある方は注意が必要です。
セレスタミンは第一世代抗ヒスタミン薬(d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)ステロイド(ベタメタゾン)を組み合わせた合剤であり副作用のリスクが高い薬剤です。特に小児では、第一世代抗ヒスタミン薬の副作用で眠気、注意力の低下、ステロイドの副作用で骨密度低下、成長抑制などが懸念されます。そのため、使用は必要最小限の期間にとどめ、長期使用は避けるべきです。また、自己判断での使用は避け、必ず医師の指導のもとで適切な投与量と期間を守ることが重要です。
短期使用であればあまり影響がないかもしれませんが、たかが(?)アレルギー性鼻炎の治療に副作用のリスクを負って使用する意味はないと考えます。そもそも、セレスタミンは1965年に販売された昭和の薬で、当時は他に薬剤がないため多く使用されておりましたが、昨今は眠気の少なく効果の高いお薬が多数開発されてきており、子供に対してこの薬剤を積極的に使用するべき理由はないと考えます。

イモサク

ステロイドの飲み薬が問題なだけで、点鼻薬や塗り薬、吸入薬は全身への吸収が非常に少ないため、副作用のリスクは低く安心じゃ。
安易なステロイドの内服はやめよう。使い時は小児科の専門の先生に任せるのがベストじゃ。