今回の新型コロナウイルスは世界に多大な影響を及ぼしています。

幸いなことにほとんどの感染者は軽度から中等度の症状ということですが、まだまだ未知な事もあり油断はできません。

経済面への打撃も強く、未だに経済新聞などは一面にコロナ関連記事がよく掲載されています。コロナ関連倒産という言葉も耳にしますし、同様に医療機関の経営難もよく取り上げられるようになりました。さて、医療機関といっても大学病院や市中病院、小規模の個人病院、クリニックなどいろいろな種類があり、内科や救急科、外科など診療科も様々です。それぞれコロナの影響度合いも違います。

というわけで、
今回は耳鼻咽喉科クリニックがどのような影響を受けたか考えてみたいと思います。

耳鼻咽喉科クリニックのイメージ

まず、コロナ渦以前の耳鼻咽喉科のイメージといえば・・・


・待合室は患者さんでごった返している

・受付してから診察に呼ばれるまで数時間以上かかる

・診察は数分で終わり、ネブライザーに機械的に案内される

・薬は短期間の処方

・診察内容がはっきりわからず延々と通院が続く

・何か質問したいけれど患者さんが多すぎて後につっかえるから質問しにくい

・診察室はオープンな場所でプライバシーに問題がある


ちょっと極端な例ではありますが、多かれ少なかれこのようなイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。
最近は予約システムが優秀になり、診察が近くなったら呼び出しメールやLINEが自動配信されるので、待ち時間は昔に比べずいぶん改善したように感じます。

良くも悪くも、耳鼻咽喉科クリニックの治療法は画一的でした。

コロナ渦での耳鼻咽喉科クリニック

コロナ渦において耳鼻咽喉科クリニックで何が起きていたのでしょうか。

メディアでも騒がれましたが、不要不急の外出を控え、それが受診抑制となり、どの病院やクリニックでも患者さんが減りました。

また、マスクを着用し人混みを避けるようになり、人の集まる場所は制限されました。

コロナウイルスに感染しないように感染防御をしているということは、他の感染症に対しても感染防御をしているということになります。

その結果、風邪が減りました

しっかり個人が感染対策をすることで、ここまで感染症が減らせるのかと正直驚きました。病院内では当たり前にやってきたことですが、基本的な手指消毒、マスク装用、ソーシャルディスタンス、これだけでも国民各々がしっかり意識できれば、ここまで変わるんですね。

特に子供の風邪が減った印象があります。
下のグラフはヘルパンギーナ・咽頭結膜熱(プール熱)の過去五年比較した定点報告数です。共に夏の感染症の風物詩ですが、やはり実際に今年は例年に比べかなり少ないです。

東京都感染情報センター
右がヘルパンギーナ、左が咽頭結膜熱の定点報告数、過去5年比較


耳鼻咽喉科はクリニックの専門性にもよりますが、訪れる患者の半数近くは風邪といっても過言ではありません。

受診抑制に加え、病気自体(風邪)も減る。

その結果、下のグラフでも見て分かるように耳鼻咽喉科に来る患者さんは激減しました。

6月頃から徐々に患者さんは戻り始めて来ましたが、もともと耳鼻咽喉科は夏に患者さんが減る傾向にあるため、まだまだ経営が厳しい所も多いようです。

厚生労働省
「新型コロナウイルス感染症への対応とその影響等を踏まえた診療報酬上の取扱いについて」から抜粋

これから何が起きていくか

あくまで私的な考えです。

テレワークなど働き方の変化感染症に対する意識(ソーシャルディスタンスや手指消毒など)は、これからの日常生活に根付いて行くと考えます。

特に医療機関は感染症を扱う場所でもあるので、不特定多数の人間が出入りし様々な病気の窓口になりやすいクリニックは、確実な感染防御対策が必須になります。

なかでも耳鼻咽喉科は老若男女が多く集まる代表的な診療科であり、感染対策にはより敏感にならなくてはなりません。
待合室やキッズスペース、ネブライザー治療(ネブライザー治療には様々な有用性がありますが、薬液や本体が汚染した場合、病原体を含んだエアロゾルを発生させる可能性があります)などは、感染対策がなされてなければクラスターが発生する危険性もあります。

診察室もオープンスタイル(診察スペースと中待合室、ネブライザースペースなどが全て一緒の空間にあるスタイル)であればプライバシーの問題だけでなく、感染対策でもより一層厳しい対策が必要です。下の動画でよく分かります。

クリニックの真価が問われる

耳鼻科に受診する患者さんは、たいていは自然と治ることが多いです。特に風邪、花粉症などは市販の薬でもよくなります。(もちろん早く治したい、悪化させたくない希望があるから病院に来ていると思いますが)

今回のコロナ渦では、風邪をひいたけど薬局で薬買って家でゆっくりしていたら治りました。しっかりマスクをしていたので風邪もひかず花粉症も市販薬で大丈夫でした。とおっしゃった患者さんが多くいました。

病気は病院にいかずとも自然に治ることが多い、このような認識の方が増えて行くかと思います。

しかし、自然に病気が治らないときは。

ここからがわれわれプロフェッショナル(専門職)の出番です。

病院にはいくつか種類がありますが、まず患者さんが訪れるのはクリニック(診療所)がほとんどです。いわゆる開業医です。

クリニックで、プロとして患者さんをいかに的確に診断し、確実に治療するか。
これに尽きると思います。

しかし、これが意外に難しい。
プロ(医師)が見て正しいと思い治療をしても、さらにその道のエキスパート(専門医)が見ると診断や治療方針が変わることがあります。

そのためには、

プロフェッショナルとしての意識を高く持ち、開業医であっても、最新情報の収集を惜しまず、自己研鑽に努めなければなりません。

40年前に鼓膜に穴が空いているから水には入るな!と医師に言われ、何と40年間もシャワーを除き、『自分の耳に水をつける』という行為を禁止していた患者さんが以前にいました。しっかりと丁寧に水に入る注意点を教えたところ、生まれて初めてプールで思いっ切り泳いだと嬉しそうに語ってくれました。
医師の何気ない言葉というのは患者にとってはとても大きいものであると実感しました。


鼻吸引とネブライザーのために通う、治療方針がよく分からず延々と通院する。
このような診断も治療方針も分からない患者さんは不要不急であるため、今回のコロナ渦で減ったと思います。
今後はまた増えていくかも分かりませんが、そもそも、このような従来は許されていた治療が今後は通用しなくなるかもしれません。

日本の人口、特に地方の人口は減少していますが、医療費は増え続けています。
誰もが平等に医療が受けられる国民皆保険も存続も危ぶまれています。

今回のコロナ渦が、医療会の大きなターニングポイントとなるのは間違いないでしょう。
今後、プロフェッショナルとして意識クリニックとしての真価が問われる時代が来ると思います。

専門性をもったクリニックのニーズが高まる

耳鼻咽喉科の病気はクリニックで治療できることがほとんどですが、クリニックで治療出来ない場合は近隣の大きな病院、それでも駄目なら地域中核の総合病院か大学病院という流れで紹介されることが多いです。

クリニックにめまい専門や難聴・補聴器専門、鼻副鼻腔手術専門、睡眠時無呼吸専門など、ある一つの専門分野があれば、その分野の病気はクリニックだけで診断・治療ができます。クリニックで治療が完結できる、つまりクリニックで「患者を治しきる」ことができます。

昨今、大きな病院に紹介状なし受診するハードルはどんどん上がっています。

今後、このような未知の感染症が流行した場合、その感染症の重症度にもよりますが、大きな病院は設備が整っているため重症者対応のみに受診制限される可能性だってあります。専門性の高いクリニックは、その専門に限れば大きな病院や総合病院と同等の医療が受けられます。そのような事態に陥ったとしても大きな病院の代り手となれるため、ますます需要が高まると考えます。

他クリニックと何が違うのかと明確に言えることが重要になると考えます。

完全予約制やオンライン診療が増える?

感染症の観点から待合室に人が何十人もごったかえすという状況は良くありません。

完全に3密状態です。

それを解消するには空間的密集時間的密集を避ける他ありません。

空間的密集は待合室を広くすれば解消できますが、患者さんでごった返すような場合は体育館のような待合室が必要でそれは現実的ではありません。
駐車場を使用し車で待ってもらう方法はいいかもしれません。たくさん土地が確保できれば良いですが、都市部ではなかなか難しいです。

時間的密集は、1日に診る患者数を制限し、来院する時間を分散すれば避けられます。完全予約システムを導入にすれば、おおかた解決できます。

そもそも、医師により時間当たりに診られる人数は決まっています。初診か再診かでも変わりますし、介助の必要な小児や高齢者と成人でも変わってきます。

しっかりお話しさせて頂くと診察に時間はかかりますし、検査をすればなおさらです。

そのような患者さんが同じ時間帯に一気に来院すると必然的に3密が出来上がってしまいますし、待ち時間も長くなります。

よくあるのが、朝一に始業前から並ぶ状態です。始業時点で待合室が密になり、感染リスクが高くなります。


事前予約することで患者情報が得られます。診察時間を予想し、その都度人数調整して待合室の密具合もある程度コントロールすることができます。(これは少々手間がかかりますが。)

そうすれば患者さんも人の多い待合室で待つことなく、さっさと受診しさっさと帰宅できます。

こう考えると非常に理想的に思えますが、やはりデメリットもいくつかあります。

完全予約制については、感染対策以外にも伝えたいこともあるため、また後日にブログであげたいと思っています。

あと、オンライン診療ですが、コロナ渦のため増えてきています。

もともとあったのですが、コロナ渦のため大きく規制緩和されたのです。

実際にアルバイト先でやりましたが、問診だけで終わるような病気の方はほとんど問題なく診療できます。そもそも、問診だけで終わるなら病院に来る必要はありませんからね。

さすがに初診の方や、喉に強い痛みがある方、首が腫れている方など、視診や触診などの診察や内視鏡など検査が必須になる患者さんは診断治療は難しいと思います。

ただ、これからの時代はいろんなデバイスが発達します。スマホで耳の中が見られる(実はもうあります)、喉の中が見られる、そのようなデバイスが発達しうまく連携してくれれば、耳鼻咽喉科領域のオンライン診療は発展してくと思われます。

果たしていつの時代かは分かりませんがそう遠くない時代かもしれません。
乞うご期待ですね。
そうすれば、離島にいても都内と同等の診療を受けられます。
(実際、ロボット手術ではこのような方法で遠隔手術が可能となっています)

とうかい皮フ科耳鼻咽喉科クリニックでは

さて、とうかい皮フ科耳鼻咽喉科クリニックでは、今回のコロナ渦の開業延期もあり、設計を全て白紙にし、withコロナとして再設計しました。
感染に強い設計にし、専門性をさらに特化する方針となりました。

開業時期は2021年度夏から秋になると思います。

詳しい時期が決定しましたら再度ホームページで報告致します。

とうかい皮フ科耳鼻咽喉科 貞安 令