保存的治療で改善しない耳鼻科疾患の場合は手術治療を提案します。
手術は局所麻酔で行い、全て日帰り手術となります。


「日帰り」だから手術手技が決して容易なわけではありません。手術前に患者さんやご家族の方々に病気やその治療法に関して十分に理解して頂く必要があります。日常の外来診療の合間では十分に説明は出来ません。手術が必要と判断した場合は別日を設けてしっかりお話しをさせて頂きます。

手術は院長の前勤務先である東京女子医科大学足立医療センターと連携して手術を行います。詳細は以前のブログをご覧ください。

 真珠腫性中耳炎で、大きく進行している場合は東京女子医大足立医療センターへ紹介します。院長もまだ非常勤講師として在籍しているため、可能な限り手術へ同席します。その後、術後の処置は当院で全て行う事ができますので、都内に行くのは手術前に1回、手術日に1回と合計2回だけになります。

耳科手術実績

 代表的な耳科手術の実績です。鼓膜切開術、鼓膜換気チューブ留置術などの小手術も行っております。

 最近は、当院受診の段階で既に真珠腫の進行症例であること、解剖学的にリスクの高い手術なりそうな点から女子医大での手術症例が増えております。真珠腫性中耳炎は決して経過観察して良い病気ではありません。早期に手術をすることで手術のリスクが少なくて済みます。ご心配の方は是非当院に相談してください。

術式手術場所9月の症例数(総数;2022.10~)
鼓膜再生術(リティンパ)当院3(6)
鼓膜形成術当院0(14)
鼓室形成術(耳小骨温存)当院0(9)
女子医大2(7)
鼓室形成術(耳小骨再建)当院1(9)
女子医大0(5)
乳突削開術当院0(3)
女子医大2(9)
アブミ骨手術女子医大(紹介のみ)0(1)
内視鏡下副鼻腔手術当院0(2)

鼓膜形成術が増えております。鼓膜形成術は1時間程度で終了し、同日午前中に両耳手術が可能で、お昼過ぎには帰宅できます。
疾患としては、慢性中耳炎、癒着性中耳炎、鼓室硬化症、中耳奇形、真珠腫性中耳炎、サーファーズイヤーが当院にて手術が可能です。先天性真珠腫、耳硬化症は全身麻酔や入院が必要になるため当院では施行しておりません。

手術の種類

耳の病気

鼓膜切開術

急性中耳炎がひどい場合や遷延するときに施行します。15分から30分程度麻酔をし鼓膜をメスで切開します。切開はすぐに終わります。外来で行います。
*一定の確率で鼓膜穿孔が残存する可能性があります。

鼓膜換気チューブ挿入術

滲出性中耳炎が遷延する場合や鼓膜形態が良くない(癒着が経時的に進行している)場合に施行します。15分から30分程度麻酔をし鼓膜をメスで切開します。切開した後に内用液を吸引しシリコン製の小さなチューブを挿入します。我慢できる子供であれば3歳くらいから行えます。我慢の出来ない子や3歳以下の子供の場合は必要に応じて抑制をすることがあります。外来で行います。
*一定の確率で鼓膜穿孔が残存することがあります。

鼓膜穿孔閉鎖術(鼓膜再生術)

リティンパ®を使用し鼓膜にあいた小さな穴(鼓膜穿孔)を塞ぐ手術です。小さな穿孔によって耳漏や難聴がある場合に施行します。無症状であれば施行しないこともあります。30分ほど鼓膜麻酔をしリティンパ®で閉鎖します。手術時間は10分以下です。1度で閉鎖しない場合は数回繰り返すこともあります。

鼓膜形成術

鼓膜にあいた中等度から大の大きさの穴を塞ぐ手術です。術前に中耳機能検査(鼓膜の穴を仮ふさぎする検査)を施行し、耳小骨に問題がないことを確認しておく必要があります。
まず、耳の後ろを数㎝切開し鼓膜を形成する材料を採取します。その材料を使用し鼓膜をつくります。手術時間は60分以内です。
手術室で行います。しっかりとした術前検査が必要になります。

鼓室形成術

鼓膜に大穿孔がある、鼓膜輪(鼓膜の枠部分)が一部欠損している、耳小骨に固着がある慢性穿孔性中耳炎に施行する手術です。鼓膜の内側を見る場合は、真珠腫性中耳炎の場合もこの術式となります。手術時間は90分から120分です。
手術室で行います。しっかりとした術前検査が必要となります。

乳突削開

MRSAなど抗菌薬が効きにくい細菌が感染している場合や、広範囲に真珠腫が進行している場合に行います。手術時間は30分から60分です。主に鼓室形成術と一緒に行います。

鼻の病気

鼻の病気は主に鼻づまりに対する手術となります。

下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術

手軽に受けて頂けるアレルギー性鼻炎、肥厚性鼻炎の治療方法です。
下鼻甲介粘膜にレーザーを照射し、粘膜を焼灼することにより鼻炎症状を起こしにくくします。花粉症を含めたすべてのアレルギー性鼻炎が対象となります。
麻酔時間は30分程度、手術時間は10分以内です。

粘膜下下鼻甲介骨切除術
(内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型)

前述したレーザー治療では、下鼻甲介の骨が厚い方は十分に効果が望めない可能性があります。このような方は下鼻甲介の骨を除去する手術を行います。
麻酔時間は30分程度、手術時間は40分から60分以内です。

鼻中隔矯正術
(内視鏡下鼻中隔手術Ⅰ型)

鼻中隔とは鼻腔を左右に分ける壁です。これが曲がっていると鼻中隔湾曲症と言います。日本人の8割は鼻中隔湾曲症をもっていると言われています。
ただ、鼻中隔湾曲症で鼻閉が起こっている場合があります。これは手術をしないと治りません。
麻酔時間は30分程度、手術時間は30分以内です。
*前方から鼻中隔が弯曲している場合は特殊な手術必要です。通常の手術をすると余計に湾曲がひどくなる可能性もあり、その場合は専門病院へご紹介致します。