耳管機能検査機器を導入しました

  11月から検査可能となりました。耳管機能検査待ちであった患者さん、お待たせ致しました。

耳管ってなに?

「耳管」という言葉は聞いたことがありますか?
耳管とは、耳の中と鼻の中をつなぐ管です。高い所に上ったり、飛行機に乗ったときに耳がこもった感じになる事がありますが、その時に唾を飲んだりあくびをしたときに「ブツッ」と鳴ってこもり感がとれることがあると思います。その「ブツッ」と鳴る音は耳管が開く音なのです。耳管は普段は閉鎖しており、必要なときに開放し、すぐに閉鎖します。

耳管の機能が悪くなるとどうなる?

 耳管の機能が悪くなることを「耳管機能不全」といい、その中に「耳管狭窄症」「耳管開放症」「耳管閉鎖不全症」などの病態があります。

耳管狭窄症

 その名の通り、耳管が狭窄して詰まる病態です。耳管が詰まってしまい、耳の中の圧力と大気の圧力にアンバランスが生じてしまい、耳閉感(高い山に登った時の感じ)や自分の声がこもって聞こえたり、反響したり、自分の呼吸音が響くといった症状が起こります。鼓膜に水が溜まる滲出性中耳炎を合併している事もあります。

 原因は風邪やアレルギーに伴う炎症(鼻炎、副鼻腔炎、上咽頭炎)が多いですが、腫瘍などが原因になることもあります。加齢による耳管軟骨の硬化でも起こりやすくなりますが、若い方でも体質で狭窄傾向の人もいます。小児ではアレルギー性鼻炎やアデノイド増殖症によるものが多いです。内視鏡検査とティンパノグラムと一緒に診断をしていきます。

耳管開放症

 こちらもその通り、耳管が開きっぱなしの状態をいいます。耳管狭窄症の病態と全く逆になりますが、症状は似ています。耳閉感がある、自分の声が響く、自分の呼吸音が大きく聞こえるといった症状になります。耳管狭窄症との違いは、頭を下げたり、横になったりすると症状が改善します。汗をかきやすい夏に症状がひどくなります。鼓膜が呼吸とともに動揺することもあります。

 原因は急激な体重減少や顎関節症、妊娠などがあります。

耳管閉鎖不全症(鼻すすり型耳管開放症)

 これは上記2つと一味違い、一番危険な状態です。耳管は普段は閉鎖しており、唾を飲んだりすると開放され、すぐに閉鎖しますが、閉鎖不全の状態ですと開放した後になかなか閉鎖しません。
 そこでどうやって閉鎖するかというと、「鼻をすする」ことで、耳管を閉鎖します(鼻すすりによる耳管ロック)。これゆえに、耳管閉鎖不全症は鼻すすり型耳管開放症と呼ばれます。鼻すすり癖がなく、呼吸だけで耳管ロックを起こす方もいらっしゃいます。
 鼻すすり後には鼓膜が凹んでしまい、聞こえが悪くなってしまいます。ただ、耳管閉鎖不全症の方はこの難聴の状態に慣れてしまい、聞こえない状態が正常の聴力と錯覚してしまいます。耳管が開き鼓膜が正常の状態に戻ると、聞こえが改善し聴覚過敏(acquired hyperacusis)になってしまい、すぐに鼻をすすって耳管ロックを起こして鼓膜を凹んだ状態に戻します(聞こえの悪い状態に戻します)。そういう方に「耳がボワッとして鼻をすすって治しませんか?」と問診すると、「あ!やっています」と返答します。

 耳管閉鎖不全症がなぜ一番危険な状態かというと、鼓膜の陥凹が進むことで他の病気を引き起こしてしまうことです。鼓膜の陥凹がすすみ耳の中でポケットを形成し、そこに耳垢(デブリス)が貯留し炎症を起こして周囲の骨を破壊します(弛緩部型真珠腫性中耳炎)。そこに細菌感染が合併すると、頭蓋内合併症を引き起こすこともあります。
 耳管閉鎖不全症は若い方が多く、小学生でも発症し真珠腫へ移行することもしばしばあります。耳を専門とする医師がしっかり診断し経過観察することが重要です。当院でも開院して1年しか経っていませんが、耳管閉鎖不全症で弛緩部型真珠腫で手術となった患者さんが何人もいます。

隠ぺい性耳管開放症

 中耳の病気によって耳管開放症が隠されている事がある、という意味です。例えば、鼓膜に穴が開いていると耳管開放症の症状が隠されるため、手術で鼓膜の穴を作り直す事で耳管開放症が発症してしまいます。症状が強い場合は、せっかく作り直した鼓膜にチューブを挿入しなくてはいけません。
 当院で手術待ちになっていた方々はこれが理由です。耳管開放症状は人によってはかなりの苦痛です。術前の耳管機能の評価はしっかりと行った方がよいため、手術を行わずに検査待ちとしておりました。

耳管機能検査機器

 当院で使用する耳管機能検査機器は手術の術前評価を目的とするため、高機能タイプで音響法だけではなくTTAG法(耳管鼓室気流動態法)、加圧減圧法も可能です。
 音響法だけでは完全には耳管機能障害を診断できないことがあり、確実な診断をするにはTTAG法が必要になります。高機能タイプは茨城県では導入している病院・クリニックは少なく、県央~県北地域では当院だけです。

 ピンぼけしてますが、このような機械になります。機械の導入が出来たため、耳管ピン手術実施認定医、登録施設の資格要件を満たしました。来年度にはなりますが、講習会に参加できれば耳管ピン手術が可能となります。耳管開放症でお困りの方の一助になれればと思っております。