保存的治療で良くならない耳管開放症に対して、耳管にシリコン製の小さなピンを入れる手術です。当院では2025年8月より、日本耳科学会の耳管ピン手術実施医が保険診療で行っています。
麻酔
局所麻酔
挿入時間
5分以内
耳管開放症とは

耳管は、耳(中耳)と鼻の奥をつなぐ細い管です。ふだんは閉じていて、あくびや、つばを飲み込んだときだけ一瞬開き、耳の中の気圧を調整しています。この耳管が開いたままになるのが耳管開放症です。自分の声や呼吸の音が耳に直接伝わるため、次のような症状が出ます。
- 自分の声が響く(自声強聴)
- 耳がふさがった感じがする(耳閉感)
- 自分の呼吸の音が聞こえる
横になったり、頭を下げたりすると症状が軽くなるのが特徴です。体重減少や脱水、立ち仕事、運動のあとなどに悪化しやすい傾向があります。
まずは手術以外の治療から
耳管開放症の多くは、手術をしなくても症状を軽くできます。はじめに次のような治療を行います。
- 生活上の工夫(こまめな水分補給、体重減少の予防、首元を温めるなど)
- 生理食塩水の点鼻
- 漢方薬の内服
鼻をすすると一時的に楽になることがありますが、続けると手術が必要な中耳炎につながることがあります。鼻すすりは控えてください。
これらを続けても改善しない場合に、耳管ピン挿入術を検討します。発症から半年以内は自然に良くなることも多いため、手術はおすすめしていません。
耳管ピンとは

ふだん閉じている耳管が開いたままになると、声や呼吸の音が耳へ伝わります。耳管ピンで耳管を適度に狭くし、わずかなすきまを残します。

耳管ピンはシリコン製の細い栓です。鼓膜の外側から耳管の中に入れて、開きすぎた耳管を適度に狭くします。医師主導の治験を経て2020年に医療機器として承認され、保険診療で手術ができるようになりました。サイズは3号から9号まであり、診察の結果をもとに医師が選びます。問題がなければ交換せずに長く入れておくことができます。
対象となる方
- 当院の診察・検査で耳管開放症と診断された方
- 点鼻や内服などの治療を続けても、十分な改善が得られない方
- 手術の効果と合併症について説明を受け、手術を希望される方
受診から手術までの流れ
- 診察・検査:問診と耳の診察、耳管機能検査などで耳管開放症かどうかを診断します。症状が出たり消えたりする病気のため、検査を繰り返すことがあります。
- 手術以外の治療:点鼻や内服などの治療を行い、経過をみます。
- 手術のご説明:改善しない場合、手術の効果と合併症をご説明し、ご希望があれば手術日を決めます。
- 手術当日:鼓膜に局所麻酔をして小さく切開し、耳管ピンを入れます。ピンを入れる時間は5分以内で、その日のうちに帰宅できます。麻酔の影響で一時的にめまいが出ることがあります。
- 術後の通院:手術の1〜2週間後に一度受診していただきます。その後は症状に応じて再診となります。
手術の効果と限界
これまでの報告では、手術を受けた方のおよそ8割で症状の軽減が得られています(※)。一方で、2割ほどの方は十分な改善が得られません。
耳管の働きを保つためには、耳管にわずかな「すきま」を残す必要があります。そのため症状が完全になくなるとは限らず、多くの場合は「軽くなる」ことを目標にした治療です。耳管の広さは検査だけでは正確に分からないため、ピンのサイズが合わずに症状が残ったり、逆にふさぎすぎて中耳炎のような症状が出たりすることがあります。手術後しばらくしてピンがゆるみ、症状が戻ることもあります。その場合はピンを押し込んだり、サイズを変えて入れ替えたりします。
起こりうる合併症
- 鼓膜の穴が閉じずに残る(鼓膜穿孔残存):10〜20%程度
- 鼓膜の奥に液体がたまる(滲出性中耳炎、一時的なものを含む):10〜20%程度
- 術後の違和感や軽い痛み(多くは数日でおさまります)
- 難聴、めまい、味覚障害、耳鳴り
耳管の形によってはピンを入れられず、手術を中止することがあります。耳の穴が狭い場合は、入口を切開したり骨を少し削ったりすることがあります。
費用の目安
保険診療です。手術料(耳管用補綴材挿入術)の自己負担額の目安は次のとおりです。
| 自己負担の割合 | 手術料の自己負担(目安) |
|---|---|
| 3割負担 | 約54,300円 |
| 2割負担 | 約36,200円 |
| 1割負担 | 約18,100円 |
上記は手術料のみの目安です。このほかに再診料などがかかります。ご加入の保険や所得区分によっては高額療養費制度の対象となり、窓口でのお支払いが上限額までになる場合があります。詳しくは受付でお尋ねください。
※ Kikuchi T, et al. Acta Otolaryngol. 2017;137(3):253-258(症状軽減83.0%)/Ikeda R, et al. Laryngoscope. 2020;130:1304-1309(有効率82.1%)
お問い合わせ:029-229-1670

